訴状の書き方の決まりごと
訴状の形式は法律で決まってはいないのだが、暗黙の了解というべき実務上のルールがある。
- 用紙はA4判
- 横書き
- 文字の大きさは12ポイントで、1行37文字、1頁26行(手書きの場合は除く)
- 複数枚になるときは、ホチキスで2箇所左とじ
- 下部にページ番号
- 裁判所に提出するものが「正本」、訴訟相手に提出するものが「副本」であり、訴状の最上部に赤文字で記載して提出する(副本の数は、訴訟相手の人数分を作成・提出する)。
- 正本には訴訟額に応じた印紙を貼る。
→ 訴訟印紙代 (pdfファイル)
訴状の書き方
訴訟額により書式が異なるので、下記(1)~(3)から自身に該当する項目をご覧頂きたい。
なお、先に証拠を収集しておかないと、訴状は作成しにくい。
既に手元にある証拠から逆算して文章を作成することがあり、その場合、手元にある証拠の内容により訴状の内容も異なるからだ。
(1)訴訟額が140万円以上の場合
地方裁判所が管轄となる。
訴状の作成方法は、定型の雛形は用意されていないが、後述の(2)で示している、簡易裁判所において使用されている雛形書式を参考に作成すればよい。
記載する内容は基本的に同じである(管轄が簡易裁判所であるか地方裁判所であるかの違いは訴訟額により決まるものであり、事件内容によるものではないことに留意すべき)。
簡易裁判所の雛形書式は表形式になっているが、地方裁判所に提出する書面は、同じ内容を表形式ではなく全て文章で書くことだけが違う。
下記(2)の雛形書式は8種類に分類されているが、そこにある自身の事件と同種の事件の雛形書式を見て、同じ内容を文章で書けばよい。
なお、 裁判所が訴状の書き方を公表しているが、見本がないと書きにくいだろうから、貸金請求についての地方裁判所向けの訴状の例を示す。
内容的には下記(2)の雛形書式とも合致していることを確認していただきたい。
地方裁判所に提出する訴状には、具体的にどの法律に基づき訴えを起こしたのか、可能ならば記載することが望ましい(必須ではない)。
(2)訴訟額が140万円以下の場合(うち60万以下の場合は(3)の小額訴訟でも可)
140万円以下の争いの場合、簡易裁判所が管轄となるので、そちらに作成した訴状を提出する。
簡易裁判所で行われる典型的な事件に対しては、裁判所のホームページに定型の雛形訴状が準備されている。
その雛形の空欄を埋めればよい。
下記が裁判所ホームページで用意されている簡易裁判所用の訴状の雛形とその記入例である。
(3)訴訟額が60万円以下の場合で小額訴訟を選択したとき
訴状は上記(2)と同一の雛形書式を利用する。
小額訴訟にしたい場合は、同書式の上部にある「□小額訴訟による審理及び裁判を求めます」の箇所の「□」にチェックを入れるだけである。
ただし、小額訴訟は金銭を求める訴えのみに利用できる制度であるため、上記雛形書式のうち「賃料増(減)額請求」「建物明渡請求」では利用できず、同雛形書式にはこのチェック項目がない。
証拠説明書を作成する
提出する証拠は、コピーしたものを提出する。
その際、書面の右上に通し番号を振る。
原告であれば甲1号証、甲2号証…、被告であれば乙1号証、乙2号証…となる。
また、証拠の内容を説明するための「証拠説明書」も添えて提出する。
書き方及び見本は 裁判所が公表している証拠説明書の作成要領(pdfファイル)を参照。
自分の持つ証拠が原本ではなくコピーの場合は「写し」と呼ばれる。
例えば、病院からカルテのコピーを取り寄せた場合は原本ではないから「写し」になる。
事件番号は、訴状提出後に割り振られるため、訴状作成の段階では事件番号は決まっておらず、原告が訴状提出時に提出する証拠説明書には事件番号の記載はなくてよい。
訴状と一緒に提出するもの
- 訴状副本
- 証拠説明書
- 証拠
- 郵券
裁判所に提出する「正本」の他に、相手に同じものを「副本」として提出する。
訴状と同様、「正本」「副本」を提出する(それぞれ、1枚目の上部に赤文字で「正本」「副本」と記載する)。
証拠は、コピーしたものを上記同様に「正本」「副本」として提出する(各証拠には、それぞれ1枚目の上部に赤文字で「正本」もしくは「副本」と記載する)。
原本は裁判期日に裁判所へ持参し、裁判官と相手に見せる。
被告に書類を送付したり、裁判所からの連絡物を受け取る際に使用する切手を納付する。○円の切手が○枚と決められているが、裁判所ごとに内訳が異なるため訴状を提出する裁判所に電話で聞く。
- 固定資産評価証明書(不動産に関する事件の場合に添付)
- 資格証明書(当事者が法人の場合に商業登記事項証明書等を添付)
- 不動産登記簿謄本(不動産に関する事件の場合に添付)
訴状の提出先
140万円以下なら簡易裁判所、140万円以上は地方裁判所が管轄となるが、どこの簡易裁判所あるいは地方裁判所でもよいというわけではない。
原則は被告の居住地の裁判所である。
ただし、下記の規定から他の場所を選択することも可能だ。
- 義務履行地の裁判所
- 事務所や営業所所在地の裁判所
- 不法行為地の裁判所
- 不動産所在地の裁判所
- 被相続人の住所地
金銭支払いなどの義務は債権者の所へ持参して支払うのが原則だから、権利者である原告の住所地の裁判所に起こすことができる。
ただし、その事務所や営業所での業務に関する訴訟にかぎる。
例えば交通事故や、詐欺などの不法行為による損害賠償請求は、その不法行為のなされた地(結果の発生した地も含む)の裁判所に訴訟を起こすことができる。
ただし、その不動産に関する訴訟にかぎる。
ただし、相続や遺贈に関する訴訟に限る。