原告が提出した訴状に対して被告が初回に反論する書面を答弁書と呼ぶ。
裁判所から送られてきた訴状には、第1回口頭弁論期日の日時と、その期日の約1週間前までに答弁書を提出せよという内容が書かれた書面が同封されている。
なお、地方裁判所で行われる訴訟においては、被告は答弁書を提出すれば第1回口頭弁論期日は出席しなくてもよい(擬制陳述)。
これが簡易裁判所になると、法律的には書面さえ提出していれば2回目以降も出席しなくてよいことになっている。
答弁書の書式
- 簡易裁判所で行う訴訟の場合(小額訴訟含む)
- 地方裁判所で行う訴訟の場合
裁判所の雛形書式を利用するとよい。
上記1で示した簡易裁判所の雛形書式は表形式になっているが、地方裁判所に提出する書面は同じ内容を表形式ではなく全て文章で書く。
記載する内容に違いはない。
見本がないとわかりにくいだろうから、下記に示す。
答弁書書式例(貸金請求の場合)
答弁書を作成する際の決まり事
答弁書の形式は法律で決まってはいないのだが、暗黙の了解というべき実務上のルールがある。
なお、簡易裁判所向けの雛形書式を使用する場合など、手書きの場合、下記3は該当しない。
- 用紙はA4判
- 横書き
- 文字の大きさは12ポイントで、1行37文字、1頁26行
- 複数枚になるときは、ホチキスで2箇所左とじ
- 下部にページ番号
答弁書を作成する
書式・記入方法の注意事項を説明する。
- 事件番号を必ず記入する
- 認否の仕方
- 「正本」「副本」の記載
- 小額訴訟における通常訴訟への移行
- 時効
原告の場合は訴状を作成する段階では事件番号が決まっていないため訴状には事件番号の記載がない。
しかし、答弁書には必ず事件番号を記載する。
①出来事に対する認否
相手の記述を認めるときは「認める」、否定するときは「否認する」、知らないときは「不知」と記載する。
②主張に対する認否
「被告は○○法○条により、~すべきだ」というような相手の主張を否定するときは「争う」、認めるときは「認める」と記載する。
裁判所に提出するものが「正本」、原告に提出するものが「副本」であり、答弁書の最上部に赤文字で記載して提出する。
小額訴訟において被告が通常訴訟への移行を希望する際は、雛形書式の上部にある「□(原則として1回の期日で審理を終了する)小額訴訟ではなく通常の手続きによる審理及び裁判を求めます。」にチェックを入れる。
時効になっている場合は、自ら申し出る必要がある(時効の援用という)。
提出する証拠と証拠説明書の作成
こちらからの反論に用いる証拠があれば一緒に提出する。
提出する証拠は、被告であれば乙1号証、乙2号証‥と証拠番号をふり、その内容を説明するための「証拠説明書」を添えて提出する。
裁判所が公表している証拠説明書の作成要領(pdfファイル) を参照。
答弁書と一緒に提出するもの
- 答弁書副本
- 証拠説明書
- 証拠
裁判所に提出する「正本」の他に、相手に同じものを「副本」として提出する(それぞれ、1枚目の上部に赤文字で「正本」「副本」と記載する)。
訴状と同様、「正本」「副本」を提出する(それぞれ、1枚目の上部に赤文字で「正本」「副本」と記載する)。
証拠は、コピーしたものを上記同様に「正本」「副本」として提出する(各証拠には、それぞれ1枚目の上部に赤文字で「正本」もしくは「副本」と記載する)。
実物は裁判期日に裁判所へ持参し、裁判官と相手に見せる。
提出先
正本は裁判所に提出する。
副本は、裁判所から原告に郵送してもらう方法と、自分で原告の送達先に直接郵送する方法がある。
また、郵送ではなく、それぞれにFAXで送っても良い。
この点については裁判所に電話して聞けば教えてくれる。
反訴について
訴訟は通常、原告より被告に対して何らかの履行(あるいは確認など)を求めるものである。
ところが、訴訟の係属中に被告から逆に原告に対し、履行を求める申し立てをすることもできる。
これを反訴という。
原告から被告に対し、売掛金20万円の請求をしていたとしよう。
たまたま被告も原告に対し35万円の貸金があって、期限が来ているのに支払ってもらえないというときに、被告はまず、20万円について貸金と買掛金とを帳消し(相殺)にするとの申し立てをする。
だが、それで満足せずに、残りの15万円も取り立てたいときに、原告から起こされた売掛金請求の訴訟に便乗して、逆に原告に対しその15万円の債務の履行を求めようというので、これも許されるのである。
反訴するには反訴状を提出する。雛形書式はないが、書き方は訴状と同じである。
必ず本訴の事件番号は記載する。
なお、小額訴訟や手形・小切手訴訟は反訴できない。