陳述書とは
陳述書とは、当該訴訟に関連する事情を知る人物が、自分の知ることを文章にして証拠とした書面である。
第3者のものだけではなく、原告・被告本人が自身の訴訟について証言した書面もこれに該当する。
証人尋問を実施するとき、その証人は事前に提出することが実務上定着している。
尋問の際、証人は陳述書に基づいて証言を行うことになる。
ここで、注意すべきことは、原告・被告本人が証言した陳述書は、それぞれが既に提出している訴状・答弁書・準備書面と内容はかなり重なることだ。
逆にそうならない場合はおかしい。では、両者は何が違うのかというと、これまでに提出したそれらの書面は、あくまで、自分の主張(=意見)に過ぎないが、陳述書は内容は同じでも証拠として扱われる点が異なる。
交通事故被害にあった被害者が原告となった例をあげよう。
その原告はこれまでに訴状や準備書面で、いつ、どこで、誰から、どんな被害を受けたのか、ということを主張してきているはずである。
その上で、陳述書においても、いつ、どこで、誰から、どんな被害を受けたのか、自分で書面にまとめて、自身の証言を証拠として提出するのである。
そんな書面で自分に不利なことを書くはずはないということは裁判官だってわかっている。
だから、相手が既に提出している客観的証拠を、本人の陳述書のみでひっくり返すということはかなり難しい。
ただし、双方に証拠がない事柄については、この尋問の証言が証拠として採用されることも珍しくはない。
陳述書の書き方
以下の点に注意して作成する。
- 陳述書は証拠なので、必ず1枚目に証拠番号を書く。
- これまでの出来事を時系列で書く。
- 内容は段落分けして、段落ごとに番号を振る。番号を振るだけではなく、各番号ごとに小見出しをつけると、なお良い。
- 素人は自分の感情や意見を強調しがちであるが、陳述書はあくまで客観的事実を述べるためのものであるから、記載する内容は発生した出来事をメインとする。
- 記載内容について、それが事実である証拠があれば、その証拠番号を併記するとよい。
- 各事件ごとにより必要な枚数は大きく異なるが、基本的には簡潔にまとめ、少ないほうが望ましい。しかし、込み入った事件は長くなることもあり、数十枚になる場合もある。
陳述書作成
下記に貸金請求を例とした陳述書の作成例を示す。
陳述書例
証拠申出書の作成
尋問を行う際の陳述書を提出するとき、証拠申出書も同時に提出する。
これは、人証という証拠を申し出るための手続きである。
この際、その証人にどのようなことを尋問するのかを記載した尋問事項も別紙として添付する。
作成時の注意点を述べる。
- 「同行」と「呼び出し」
- 主尋問の所要時間
- 尋問事項の作成方法
証人が裁判所で証言するにあり、裁判所から証人に対し「呼び出し状」を郵送し尋問への参加を指示することを「呼び出し」という。呼び出しをしない場合は、「同行」という。
下記の証拠申出書記載例に示したように、証人が「呼び出し」か「同行」かを記載する。
こちらの言い分を証言する尋問を主尋問、相手から受ける尋問を反対尋問という。
主尋問は、自らに代理人がいるときは代理人が証人に対して行う。
代理人がいない本人訴訟の場合は、裁判官が証人に対し主尋問を行う。
主尋問の時間がどれくらいかかる予定か、あらかじめ証拠申出書に申告しておく。
なお、主尋問と同じ時間だけ反対尋問の時間が確保されるのが一般的である。
尋問は1問1答方式が大原則である。
1つの質問につき、1つの回答を簡潔に行えるような聞き方にする。
なお、主尋問では誘導尋問は禁止されている。
誘導尋問とは、例えば、「あなたは、平成○年○月○日に、○○において、○○さんから500万円を借りましたね」という聞き方である。
尋問当日には、あらかじめ提出していた尋問事項と全く同じ事を聞かなくてはならないということはない。
代理人がついている場合は、尋問事項は大ざっぱに書いて最後に「その他本件に関する一切の事項」と記載して提出し、尋問当日には詳しく尋問することが多い。
しかし、本人訴訟ではそうはいかない。
裁判官が行う主尋問は、こちらが作成した尋問事項のみしか尋問してくれない。
以下に、原告本人が自身の尋問を申し出るための証拠申出書について作成例を示す。
なお、尋問は裁判官の指示で行うことも多いが、その際も証拠申出書は提出する。