離婚準備における別居中でも婚姻費用は請求できる
結婚して一緒に生活する際、食費・光熱費などの日常生活でかかるお金、医療費、通信費など、必要な生活費のことは法律用語で「婚姻費用」と呼ばれています。
結婚期間中、この婚姻費用については夫婦で分かち合うように法律で定められています。
夫婦仲が悪くなって別居してもその義務は果たす必要があり、自身に収入が全くない場合や相手より収入が少ない場合は婚姻費用を請求できます。
また、自身の方が収入が多い場合でも、子供と一緒に生活するなど日常の生活費が相手よりも高額になる場合は婚姻費用を請求できます。
- 住居費
- 食費・医療費
- 交際費
- 養育費
- 医療費
- 娯楽費
<婚姻費用の目安>
婚姻費用の目安は裁判所が一覧表にまとめています。
⇒ 婚姻費用の算定表(pdf)
夫:会社員で年収600万
妻:パートで年収200万
子:14歳
子:10歳
婚姻費用は毎月10~12万円
夫:自営業で年収450万
妻:会社員で年収450万
子:15歳以上1人
婚姻費用は毎月6~8万円
浮気していた妻は婚姻費用を請求できるか
本人の浮気が原因で別居するほど夫婦仲が悪化してしまった場合でも婚姻費用は請求できるのか?という疑問を持つ人もいるでしょう。
結論としては婚姻費用の請求はできますが、それが認められるかは別居原因の内容にもよります。
たとえば、配偶者が趣味や宗教にのめり込んで家族を相手にしなくなったことが浮気の一因になったのであれば、配偶者にも一定の責任はあるので婚姻費用の請求はある程度認められるでしょう。
そのような事情が全くない純粋な浮気であった場合は、もらえるお金が大幅に減少するか、全くもらえないこともあり得ます。
なお、子供をつれて別居している場合、子供の養育費は別居の原因によらず支払いの請求ができます。
相手がお金(婚姻費用)を支払わないときは?
仲が悪くなって別居した相手からお金(婚姻費用)を支払ってもらうことは容易なことではありません。
相手がお金を払ってくれないときは、家庭裁判所に「婚姻費用分担請求の調停申立」を申し立てることによって請求することが可能です。
婚姻費用分担請求の調停申立とは?
「婚姻費用分担請求の調停申立」とは、婚姻費用について条件が一致しなかったり相手が支払いに応じないときに家庭裁判所に申し立てるものです。
離婚調停とは別の調停なので、離婚調停前に別居したいときなどにとりあえず別居費用だけ請求することが出来ます。
離婚調停と同時に申し立てることもできます。
経済的なゆとりがなく、今すぐ婚姻費用が欲しいときには、「婚姻費用の分担請求調停」の申し立て時に上申書を提出します(上申書とは裁判所に依頼や報告事項を伝えるための書類)。
調停委員会が必要であると認めれば、相手側に支払いするよう命じます。
しかし、強制力はないので支払ってくれる保証はありません。
よって、「婚姻費用分の分担請求調停」の申し立てをしたからと言って、お金がない状態で別居に踏み切ることは避けましょう。
申立方法
「婚姻費用の分担請求調停」は、相手の住所地を管轄している家庭裁判所に申し立てることが原則ですが、双方が合意すれば他の家庭裁判所にも申し立てることができます。
申立に必要なものは以下のとおりです。
- 申し立て書
- 夫婦の戸籍謄本
- 申立人の収入証明書類
- 収入印紙・郵便切手
本籍地の役所で入手できる。郵送も可能
源泉徴収票、給与明細、確定申告の写し等
収入印紙1200円分、郵便切手は裁判所により金額が異なるので管轄の裁判所に聞く
提出した書類に相手に知られたくない情報があるときは、提出前に裁判所に相談してください。
事情を説明すれば裁判所が配慮してくれることがあります。
決定方法と金額の変更可能について
婚姻費用の分担請求調停において、裁判官は冒頭で示した「婚姻費用の算定表」を利用し、夫婦それぞれの経済状況(収入・資産)、支出状況、子供がいるときは人数や年齢を加味して分担額を決めます。
相手方が婚姻費用の分担に応じず、婚姻費用の分担請求調停が不成立になったときは、自動的に裁判官が審判を行います。
この審判では、調停の過程で明らかになった全ての事情を加味して婚姻費用の分担について判断します。
ここでの判断に納得がいかない場合、2週間以内に不服の申し立てを行えば高等裁判所で改めて判断が行われます。
なお、生活費が厳しい場合は「婚姻費用仮払いの仮処分」も同時に申し立てができます。
これが認められれば、審判前の保全処分として婚姻費用を仮に支払うように命じられます。
また、審判で金額が決定した場合でも、収入の減少や子供の進学などで生活状況が変わった場合には、金額の変更を求める調停を申し立てることが出来ます。
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